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東京地方裁判所 平成2年(ワ)263号 判決

原告 滝島總一郎

右訴訟代理人弁護士 井上智治

長尾節之

野末寿一

千原曜

野中信敬

久保田理子

清水三七雄

被告 関英子

関一雄

関卓司

関園子

右法定代理人親権者母 関英子

被告 中枝光統

右法定代理人親権者母 中枝多恵子

被告ら法定代理人亡関一統相続財産管理人 関一雄

被告五名訴訟代理人弁護士 田中紘三

主文

一  原告に対し、それぞれ亡関一統から相続した財産の存する限度で、

1  被告関英子は、金一億六五〇〇万円及び内金二五〇〇万円に対する昭和六三年一〇月二九日から、内金二五〇〇万円に対する同年一一月八日から、内金一五〇〇万円に対する同年一二月五日から、内金一五〇〇万円に対する同月一〇日から、内金二五〇〇万円に対する同月一七日から、内金一五〇〇万円に対する同月二〇日から、内金一五〇〇万円に対する同月二五日から、内金一五〇〇万円に対する同月三〇日から、内金一五〇〇万円に対する平成元年一月三〇日から支払済みまで年六分の割合による金員を、

2  被告関一雄、同関卓司及び同関園子は、それぞれ金四七一四万二八五七円及び内金七一四万二八五七円に対する昭和六三年一〇月二九日から、内金七一四万二八五七円に対する同年一一月八日から、内金四二八万五七一四円に対する同年一二月五日から、内金四二八万五七一四円に対する同月一〇日から、内金七一四万二八五七円に対する同月一七日から、内金四二八万五七一四円に対する同月二〇日から、内金四二八万五七一四円に対する同月二五日から、内金四二八万五七一四円に対する同月三〇日から、内金四二八万五七一四円に対する平成元年一月三〇日から、支払済みまで年六分の割合による金員を、

3  被告中枝光統は、金二三五七万一四二六円及び内金三五七万一四二八円に対する昭和六三年一〇月二九日から、内金三五七万一四二八円に対する同年一一月八日から、内金二一四万二八五七円に対する同年一二月五日から、内金二一四万二八五七円に対する同月一〇日から、内金三五七万一四二八円に対する同月一七日から、内金二一四万二八五七円に対する同月二〇日から、内金二一四万二八五七円に対する同月二五日から、内金二一四万二八五七円に対する同月三〇日から、内金二一四万二八五七円に対する平成元年一月三〇日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

三  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

一  原告の請求

主文一項と同旨

二  事案の概要及び争点に関する判断

1  争いのない事実

(1)  原告は、別紙手形目録記載の約束手形九通(以下「本件各手形」という。)を所持しており、右各手形は、支払呈示期間内に支払場所に呈示された。

(2)  訴外関一統は、昭和六三年一二月九日死亡し、当時被告関英子は同人の妻であり、被告関一雄、同関卓司、同関園子は嫡出子、同中枝光統は非嫡出子である。

(3)  被告らは、関一統に関する相続について、東京家庭裁判所に対し限定相続の申述を行ったところ、平成元年三月二〇日同裁判所により右申述が受理され、関一雄が相続財産管理人に選任された。

2  手形の振出について

甲第一ないし第九号証の各一の関一統名下の印影は、同人の印章によって顕出されたものであることが認められる(甲第一二号証)ので、右印影は同人の意思に基づいて顕出されたものと推定されるから、真正に成立したものと推定すべき甲第一ないし九号証の各一によれば、関一統が本件各手形を振り出した事実を認めることができる。

3  なお、判例上、限定承認がなされた場合は、相続財産の限度において弁済すべき旨の留保を付した上で、相続により承継した債務の全額について給付判決をすべきであることが確立しているといってよいが、被告代理人は、限定承認がなされた場合は、相続債権に関する訴訟上の請求に対しては民法九二九条により算出される配当弁済額の限度(その立証責任は相続債権者にある)において給付判決をなしうるにすぎず、これを超える部分については債務存在確認判決をするに止めるべきであると主張する。しかしながら、右判例における取扱は、債務は全額承継するとしつつ責任は相続財産の限度に止める限定承認の制度の趣旨(民法九二二条)に適合するし、また、限定承認制度と民事執行制度等との関係は民法、民事執行法等の規定及びその解釈運用により調整が図られているのであって、被告代理人が主張する取扱をしなければ右調整が図れない訳ではない上、右のような取扱は債務名義の取得手続を煩雑困難にする恐れもあるから、右主張は採用できない。

三  以上によれば、原告の被告らに対する請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 坂野征四郎)

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